レポート
2022.05.29

つがるの熱いママサーファーの想い

みなさんはsayakaさんという方をご存じですか?県内で有名なビーチクリーン活動をされている方で、2021年4月から主につがる市にある出來島海岸にて活動しています。活動の様子を発信しておられるInstagramをのぞくと、きれいな海やサーフィンの写真や動画が投稿されている一方で、たくさんのゴミの写真も。

一体どんな人だろう?どうしてクリーンアップ活動を始めたんだろう??お話し聞いてみたい!という思いのまま突っ走り、ダメもとで取材のお願いをしたところ、快く応じてくださいました。

■sayakaさんとサーフィンの出会い


【画像:https://www.instagram.com/sayaka.kankan/より】

sayakaさんはつがる市にお住まいのママサーファーです。海岸のゴミをなくすためのクリーンアップ活動をしながら、普段は全く別のお仕事もされています。サーフィンとの出会いをお聞きしたところ、海が近かった訳でも、もともと海が好きだった訳でもなく、たまたまお友達の家に置いてあったサーフボードがきっかけだったそうです。「乗らないんだったら貸して~!」と試してみたら、一回で楽しさにハマってしまい、毎日海に通うサーフィン人生が始まったとお話ししてくれました。

それからたびたび海に出ていたところ、1人で波に乗るsayakaさんの姿を見て地元のサーファーの方が声をかけてくれるようになったそうです。そのころからすでにsayakaさんの人を引き付ける力があったのだろうなとお話を聞きながら思いました。出産や育児によるブランクはありつつも、10年ほど続けているといいます。

■クリーンアップ活動を始めたきっかけ


【画像:https://www.instagram.com/sayaka.kankan/より】

サーフィンを始めてから約10年、海岸は当時に比べて本当に汚くなってしまい、サーファー仲間と一緒に砂浜に流木で大きな絵を描いたりして遊んでいたのが、今はそれができないと嘆くsayakaさん。それが自分の中でどうしても納得がいかず、ゴミを拾い始めたそうです。

「ゴミの量は多くて、自分一人が拾ったところで何も変わらないけど、自分が拾うことでそれを見た人の意識が変わってくれたら。海岸に来てゴミを拾うということはしなくても、こういう人がいるから自分も気を付けようというきっかけになれたら。」そう話すsayakaさんを見ていると私も本当に意識が変わっていくようでした。というか、変えなきゃなと、これまでの自分の生活が恥ずかしくなってきました。「本音は新調したウエットスーツを汚したり壊したりしたくなくてさ~!」と弾ける笑顔で話してくれましたが、多大なる苦労がそこにはありました。

■拾ったごみの行きつく先とは


【画像:https://www.instagram.com/sayaka.kankan/より】

現在鯵ヶ沢町の七里長浜では、町役場の全面的なバックアップのもと、sayakaさんのサーファー仲間である弘前のサーフショップSHAKAさんの主催で、毎月ビーチクリーンをしています。参加者が拾ったごみを入れるゴミ袋の提供や拾ったごみの回収まで町役場の方が担っているそうです。

一方、つがる市ではそうではありません。私は、単純にゴミ拾いは良いこと、良いことは市町村がバックアップしてくれる、という思い込みがありましたが、そこには根強いゴミとリサイクルの問題が絡んできていました。当初sayakaさんがつがる市へ掛け合った際には、ボランティアによるゴミ拾いをしたとしても、ゴミを処分する場所が無いため、市としての協力は難しいとのことでした。自分で持ち帰って町内のゴミステーションへ持ち込む分には問題ないとのことで、20~30袋を近隣の方や収集業者の方にも理解を得て自宅エリアのゴミステーションへ捨てていたといいます。現在は特例として一般の最終処分場への持ち込みの許可を得ているのですが、つまりは焼却施設ではなく埋め立て地へ埋めている状況なので、大量に持ち込まれると長期間の使用ができなくなってしまいます。

なぜ焼却処分ができないのか。市としては漂着したゴミを焼却する際に有害な物質が出てくるのでは、という懸念があったようです。それを聞いたsayakaさんは独自に調査を行いました。(行動力…!)単に「調査」と簡単に書きましたが、出來島~鯵ヶ沢エリアの地点を分割し、実際に足を運んで車や運搬用トラックの通行が可能かを調べたり、それらを写真と合わせて資料にまとめたりと、多大な労力がかかっています。この「調査」の結果によると、海岸のゴミは一般の生ゴミよりも塩分濃度が少なかったため安全面はクリアだったそうで、その資料を提出して市からの返答待ちをしている状況だといいます。Instagramで見せている活動だけでなく、しっかりとその先まで見据えた地道な活動もしている、しかも一人で、ボランティアで、という事実にただただ「すごい…」の感想しか出てきませんでした。

■最終目標は雇用につなげること

「オールハンドクリーンアップオーシャン」という全国のイベントがあり、全国各地をつないで5月と9月の年2回ゴミ拾いをするイベントがあるのですが、sayakaさん含めそちらに参加している方々の共通の課題がやはり処分の問題だといいます。処分するにも費用はかかってしまうので、ゴミ拾いのイベントを企画したとしても行き場がない、という状況になります。そこでリサイクルのラインを作れないかと考え、リサイクル装置を持つ企業とのやりとりを始めているそうです。

将来的には、農機具等を利用してリサイクルプラスチックでの製品づくりをし、さらにそれを輸出するなど、農家の多いつがる市での冬季期間中の雇用の場として運用できればと語ってくださいました。そうすると冬季期間中出稼ぎにいく必要はなく、敷地内の小屋などで作業できることになります。しかし農機具と海水との相性が良くないため、まだまだ問題点はあり、達成率は数パーセントにも満たないといいます。

■Instagram発信は海がきれいになっていく物語づくり


【画像:https://www.instagram.com/sayaka.kankan/より】

初めて最終処分場にゴミ袋数十袋を車にパンパンに詰め込んで持って行ったとき、目の前で埋め立てられていくのを見てぞっとし、トラウマのようになってしまったそうです。この現状が続くと子どもたちやもっと下の世代が大きくなったころにはどうなっているのだろうか、私もsayakaさんのお話を聞きながら子どもたちの将来を思い浮かべていました。

これまで鶴田町、五所川原市、つがる市と住んでみて、一番つがる市が好きなsayakaさん。自分の好きな町はみんなにも好きでいてもらいたい、子どもたちのためにもみんなが集う場で合ってほしい、という想いが、sayakaさんの活動の原動力となっています。

市の方と話しているときに、出來島を八戸市の舘鼻岸壁の朝市のように賑わう場にしたいと伝えたところ、好感触を示してくれる方もいたそうです。自分の住む町が賑わうのが嬉しいという想いは共通ですよね。出來島やつがる市の海がきれいになっていくための物語やドラマを、これからもInstagramで発信し続けたい、と力強くお話ししてくれました。
「あがいたほうがかっこいい」、簡単にsayakaさんはそう言いましたが、「あがき続ける」ことの難しさを誰よりも知ったうえでお話ししているのだと思うと、人間としての強さを感じました。私を含め、これを読んでくださった方の心にほんの少しでも海のゴミ問題が刺さってくれていたらなと思います。

イベント詳細

イベント名つがるの熱いママサーファーの想い
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