毎年、春から初夏にかけて、青森県の陸奥湾には野生のイルカたちがやって来ます。
イルカといえば、水族館のショーなどでお馴染みの「バンドウイルカ」などを想像しがちですが、青森県の陸奥湾にやって来るのは「カマイルカ」という白黒で身体が小さめのイルカなのです。
かれこれ10年ほど前から、陸奥湾のイルカたちの生体について調査をされている、青森大学の「清川 繁人(きよかわしげと)教授」にご協力を頂き、今回はイルカたちに会いに海へ繰り出しました!
▲イルカたちを観察する為に、まずは青森市からお隣、外ケ浜町の蟹田漁港へ。陸奥湾フェリーのターミナルでもある「トップマスト」という巨大なタワーが海に面してそびえ立ちます。
▲蟹田地区で漁業をされている漁師さんの漁船に乗せてもらい、いよいよ陸奥湾へ繰り出します。ここから数十分かけ、下北半島の脇ノ沢地区がほど近い海まで移動します。はたしてイルカたちは出て来てくれるのでしょうか?
▲清川教授「今日は風が弱くて波も穏やかで、イルカと同じ餌を食べるウトウという海鳥も見えます。期待できそうですよ」とのことで、ワクワクしながら待っていたところ、
▲出たー!!イルカだー!!
もの凄い頭数です! こんなに間近でイルカたちの群れに遭遇したのは、初めての経験です!!
水面から顔を出したかと思えば、またすぐ潜ったり、ジャンプをしてみせてくれたり。
あまりにも泳ぐのが速くて、シャッターを切るのも大変なくらいです(笑)
▲この日のベストショット。海上を飛んでいた海鳥にまるで挨拶をするかのように、イルカがジャンプしてくれました。このようなイルカの姿を見たのは清川教授も初めてとのことです。海鳥が餌を加えていた訳ではないので、単純にイルカが鳥に興味を示して跳ねたのだろう、とのことです。
<以下、清川教授 談> 陸奥湾を回遊するイルカについて、これまでの調査から陸奥湾海域の水温と、エサとなる小魚の数がイルカの行動を決定付けていることがわかりました。今年は寒暖の差が大きく、特に海表面の水温の変動が激しかったのですが、4月~6月の平均水温で見ればほぼ例年並みで、イルカが見られた時期も4月末~6月末までと、例年と比べ変化はありませんでした。
しかし、今年1月~2月にかけて、通常漁獲量が最も少ない時期にもかかわらず、横浜町でマイワシが大量に沿岸に打ち上げられました。この原因はわかっていませんが、マイワシの日本沿岸を回遊する行動に大きな変化がもたらされ、4月末~6月末の生態調査では、イルカがマイワシを追うシーンがほとんど見られませんでした。
それにより、マイワシを追い詰めて捕食する海域の青森湾でイルカの姿が見られず、陸奥湾の入り口にあたる平舘~脇野沢の海域で、昨年の1/3~1/5にあたる約100頭の個体が見られるに過ぎませんでした。今後はイワシの生態に変化がないか、日本周辺海域も含め、注意深く見守っていく必要があると思われます。
イルカたちが毎年やって来るこの陸奥湾の環境も、徐々に変化してきているのかもしれません。世界中に数えきれないほどの湾や入江などはありますが、陸奥湾は津軽海峡を渡って北海道へと旅立つ前の、イルカたちにとっての素晴らしい餌場になっているのです。
この陸奥湾の素晴らしい環境を、これからも守っていく為に。私たちに何ができるでしょうか? 真剣に考えなければいけない時がやってきたのかもしれませんね。
今後とも、イルカたちの生体と陸奥湾の環境を調査することにより、何かヒントが見えてくるかもしれません。
そして、海から発せられるメッセージを感じ取る為には、一人一人がもっと海に関心を持っていくことが大切なのかなと、今回の調査に同行させて頂き実感しました。
<ご協力ありがとうございました!>
【清川 繁人 氏 / 青森大学 薬学部 教授】陸奥湾のイルカたちの生体に興味を持ち、10年ほど前から調査をされている清川教授。現在は陸奥湾フェリーとタイアップし、フェリー船上からイルカたちをウォッチングする「イルカいないかツアー」のガイドをされるなど、青森県を代表する「イルカ博士」として精力的に活動されている。また、青森県の弘前藩にかつて存在したという忍者集団「早道之者(はやみちのもの)」について調査研究、忍者パフォーマンスを披露する全国初の大学公認「青森大学 忍者部」を設立し顧問を勤めるなど、多岐に渡りご活躍されている。
Dolphin Project 青森・陸奥湾イルカ情報(公式ホームページはこちら)
イベント名 | イルカたちがやって来る陸奥湾の環境を、これからも守るために |
小学生の頃に、両親と訪れた夏泊半島の先端から、野生のカマイルカの群れを目撃した。今回は約20年ぶりに、陸奥湾のカマイルカたちに遭遇できて、嬉しすぎて海にダイブしそうになる。イルカのことを考えると夜も眠れない。