三方を海に囲まれた青森県には、東は太平洋、北は津軽海峡、そして西には日本海があります。いずれ劣らぬ美しい海で一度は行ってみたいところばかりです。青森の日本海を堪能するには、移動しながら車窓を楽しむことができる、海沿いを走るローカル線・五能線の利用がお勧めです。ゆっくりと海沿いを走るローカル線で、日本海の荒々しい景観を楽しんでみましょう。
鰺ヶ沢駅に停車中の五能線列車
JR五能線は、秋田県の東能代から日本海沿いを通り深浦や鰺ヶ沢、五所川原などの町を経由して青森県の川部(運行上は列車は弘前まで)を結ぶ全長147.2kmのローカル線です。全国屈指の景勝路線として知られていて、青森・秋田県境から鰺ヶ沢にかけては本当に海のすぐそばを走り、日本海の雄大な景色を堪能することができます。一方で全国でローカル線の存廃が問題になっている例にもれず五能線も営業成績は芳しくなく、青森・秋田県境を越える定期列車は1日5往復しかありません。特に観光に適している日中は1往復しかありません。また、海のすぐそばを走るという立地上、昨今の激しい天候によって被災してしまうことも多く、2022年、2023年と大雨によって被災して一部区間が不通になってしまった時期があります。旅行の計画を立てるときは、JRのホームページ等で最新の情報をチェックしておきましょう。
深浦駅に停車中のリゾートしらかみ号
五能線には、週末や年末年始などの休日を中心に、観光列車「リゾートしらかみ」号が運転されています。定期列車が日中ほとんど運行されていない五能線では、観光で訪れるときはリゾートしらかみ号を利用するのが便利でお勧めです。
リゾートしらかみ号は、青森駅から新青森、弘前を経由して五能線を通り東能代を通って秋田駅まで走っています。青森と秋田が起点となっていて弘前から乗り降りすることもできるので、一筆書きの旅程を組むこともでき便利です。
観光列車なので、特に景色のよい区間は速度を落として走ってくれたり、千畳敷海岸が目の前にある千畳敷駅では散策するために15分間停車したりします(一部列車は通過します)。また、車内で津軽三味線の実演があるなど(運転日によってはない日もある)、単なる移動の手段ではなくて列車に乗ることそのものが楽しめる列車になっています。
五能線はとにかく海岸の景色が素晴らしいので海側の座席を確保したいところです。リゾートしらかみ号は全席座席指定の列車であらかじめ指定席券を取る必要がありますが、このとき「A席」を確保しましょう。A席が海側の座席なのでほかの座席より明らかに価値の高い座席になっています。五能線自体はローカル線で営業成績も苦しいですが、リゾートしらかみ号は人気列車で指定席券は結構すぐ売り切れになってしまうこともあります。JRの指定席券は乗車日1か月前の10時から購入することができます。マニアの人は駅のみどりの窓口などで、1か月前の10時に席を買うようにしていたり、旅行会社が自社ツアー用にある程度席をおさえていたりしますので、個人で切符を手配する場合は計画が決まったら早めに座席をおさえることをお勧めします。
それでは、五能線に乗って日本一の景勝路線の鉄道の旅に出かけてみましょう。
青森秋田県境の大間越付近は岩場と荒波のコントラストが美しい、五能線の中でも特に景色のきれいな区間です。夕陽の美しさでも知られている場所なので、季節によってはちょうど列車がこの区間を通るときに美しい夕陽が拝めることもあります。車窓を十分に堪能しましょう。
青森県には魅力的な温泉が多数ありますが、日本海側にも素敵な温泉がたくさんあります。中でもウェスパ椿山駅から行くことのできる不老ふ死温泉は、日本海の荒波を間近に見ながら温泉につかることのできる海辺の露天風呂がとにかく圧巻です。時間に余裕のある方はここで1泊して日本海に沈みゆく夕陽を眺めながら温泉につかってのんびりしてみたいところです。日帰り入浴もできるので、列車を途中下車して次の列車まで時間が取れる方は(とにかく列車本数が少ないので計画はしっかり立てておきましょう)是非寄ってみたい温泉です。また、不老ふ死温泉のレストランで提供されるマグロステーキ丼も堪能してみたいところです。深浦産天然マグロを使ったマグロ尽くしの名物どんぶり御膳でおいしいです。
不老ふ死温泉へは、リゾートしらかみ号到着に合わせてウェスパ椿山駅まで送迎バスが運行されています。普通列車で行く場合は事前に予約しておけばやはり送迎に来てもらうことができます。
千畳敷海岸は、江戸時代に殿様が千畳の畳を敷いて宴会を催したといわれる、広大な岩棚が続く海岸です。日本の夕陽100選にも選ばれている夕陽の名所でもあります。リゾートしらかみ号の場合15分ほど停車して散策時間を取ってくれます(一部通過する列車もある)。夏場は海水浴とキャンプで賑わい、冬場は岩を覆う氷の壁が圧巻で、五能線の見どころの1つになっています。千畳敷海岸には、青森県出身の作家太宰治の小説「津軽」の文学碑があり、千畳敷について書かれています。現地で太宰の文章を読むと感慨もひとしおです。
不老ふ死温泉とともに訪れてみたい温泉が、鰺ヶ沢にある水軍の宿。約30万年前の海水が温泉となって湧き出しているそうです。北前船の歴史の感じられる趣ある宿で、食事も自慢の宿です。安東水軍をイメージして作られた船型の露天風呂で化石海水を含んだ温泉につかってリフレッシュしましょう。水軍の宿も日帰り入浴もすることができます。
五能線の旅は、列車の本数が少ないのがネックではありますが、美しい海を見ながら非日常体験ができること間違いなしです。是非美しい青森の日本海を堪能してください!
イベント名 | 五能線と日本海 |