レポート

“誇り”は海の向こうからやってきた!―野辺地町と北前船―

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下北半島の付け根に位置する、青森県野辺地(のへじ)町。
津軽と南部の境界線的存在となっている小さな町ですが、県内有数の港町であり、ホタテの産地としても知られています。
そんな野辺地の歴史を紐解いてみますと、町の発展には「ある船」の存在が深く関係していました。

■北前船とは

北前船とは、大阪~北海道を往復する廻船のこと。その実態は、寄港地から仕入れたものを売りさばく、「海の商社」でした。
1672年、酒田~江戸航路の整備の一環で、日本海経由の航路開拓が必要となりました。通常の航路は、太平洋側(東回り)が近いとされていましたが、グランドライン並みに危険な航海となるため、長距離ながらも安全な日本海側(西回り)の航路開拓が必要となりました。この航路は「北前船航路の前身」となり、事の顛末を知った日本海側の藩が我も我もと直航を結ぶようになります。

主な寄港地は次のとおり。


(一財)日本経済研究所作成資料より 黄色マーキング箇所は青森県内の寄港地
https://www.jeri.or.jp/center/treasure_box/pdf/kitamaebune.pdf

■なぜ野辺地が選ばれたのか?

日本海に注ぐ大河や湾を持つ港町には、流域から物資が集まる港が点在していました。港周辺には、廻船問屋や船宿などがあり、北前船の取引で町が発展していきました。「海の商社」の恩恵は都市発展につながったのです。


客船帳(野辺地町立歴史民俗資料館展示品)


野辺地町指定史跡・常夜燈
町のシンボルとして常夜燈公園に鎮座しています!

当時の野辺地は、盛岡藩の北の玄関口。他の寄港地と同じように、港町として発展していきました。 【主に取引されたモノ】


「北前船38」(加藤貞仁・北前船日本遺産推進協議会)及び「野辺地の歴史」(2014 野辺地町立歴史民俗資料館)を基に作成しました。

主に特産品を積み出しており、特に銅は盛岡藩が尾去沢鉱山(秋田県鹿角市)を抱えていたため、野辺地港から搬出していたのだそうです。 その他、野辺地の夏の風物詩となっている「野辺地祇園まつり」も、北前船の取引からもたらされました。


最優秀賞に選ばれた山車の一部は観光物産PRセンター入口に飾られます

北前船はモノだけでなく、文化も運んできたのですね…!

■航海の主役といえば?

船ですよね!(当然) 北前船に使われていた船は大きく分けて3つあります。 ①北国船 ②羽賀瀬船 ③弁才船 北前船の航路が開拓されてから江戸時代の中期までは、北国船が使われました。 北国船と羽賀瀬船は風が弱いときに櫂を漕がなければならず、船員たちにとってはかなりの重労働となりました。 18世紀以降は、北前船の主力となる弁才船が登場します。


北前型弁才船模型(野辺地町立歴史民俗資料館展示品)

北国船・羽賀瀬船の大きな違いは、帆だけで進むこと!風が弱い日に櫂を漕がなくても済むようになりました。 技術発達の速さに脱帽です。

■現代に生きる北前船・みちのく丸


うわー、超でけぇ!!!

北前船のシンボルといっても過言ではない弁才船。 なんと当時の建造技術によって復元された船が野辺地町にありました。 それが「みちのく丸」です。 【みちのく丸データ】


http://www.town.noheji.aomori.jp/life/news/news-4を元に作成

*千石積について* 当時、船の大きさは米の積載量で表されており、米を千石(1石=150kg)積めることから「千石船」とも呼ばれています。 毎年7~10月、みちのく丸の船内見学会が不定期で開催されるのですが、今年は新型コロナウイルスの影響で中止になりました。 筆者は船に乗ったことがないので…クソデカい(褒めてます)あの船から見る外の景色は間違いなく絶景なんだろうなと思いながら、キーボードを打っています。 そんなみちのく丸ですが、実はドラマや映画にも出演しています。 特に有名なのが、EXILE HIROさんが総合プロデュースを務めた映画「たたら侍」。 常夜燈公園にいるデカい船(褒めてます)がEXILE TRIBEのメンバーと共演しているのです!! 野辺地が誇る映画スター・みちのく丸の雄姿を収めたメイキング動画が野辺地町公式Youtubeにアップされております。 実際に船を動かして撮影されており、後半の完成されたシーンは必見です! https://www.youtube.com/watch?time_continue=5&v=h9aKq1qw4JE&feature=emb_title

■まとめ

江戸時代から他の地方の文化に触れる機会が多くあった野辺地町。 実は町外の方曰く、野辺地の文化は青森県の中でもかなり独特らしく、上方文化が色濃いのだとか。 北前船に携わっていた先人たちの“誇り”を残し、きちんと守っているからこそ、野辺地という町が今日まで存在し続けているのだと思いました。

■スポット情報

・野辺地町立歴史民俗資料館
場所:青森県上北郡野辺地町字野辺地1-3
開館時間:9時~16時
休館日:月曜日(祝日の場合はその翌日も)、国民の祝日、年末年始(12/29~1/3)
交通アクセス:十和田観光バス・下北バス「野辺地中央バス停」徒歩5分

・常夜燈公園
場所:青森県上北郡野辺地町字野辺地471
交通アクセス:青い森鉄道線・JR大湊線「野辺地駅」徒歩20分

イベント名“誇り”は海の向こうからやってきた!―野辺地町と北前船―

レポーター紹介

虹倉きり
文章を書いたりナレーションしたりしている無職。
「青森で面白い活動をしているヒト・モノ・コト」をテーマに執筆しています。
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