本州と北海道を結ぶ「北の玄関」として発展してきた青森駅は、2024年4月に大きくリニューアルされました。さらに8月上旬にはねぶた祭が開催され、青森駅周辺のエリアは多くの熱気に包まれました。
そんな青森駅から歩いてすぐの場所は「青森ウォーターフロント」が広がっています。ウォーターフロントとは、海・川・湖などに面する水際の地帯のことです。「青森ベイエリア」とも呼ばれています。
この地区では海を身近に感じながら、観光やイベントなどを楽しめる場所として、観光客のみならず地域住民の方々の憩いの場所として愛されています。
今回は、そんな見どころもりだくさんのベイエリア周辺を歩きながら、青森の海の魅力をお伝えしていきます。
青森駅から歩いて5分の場所にあるのは「あおもり駅前ビーチ」。旧青函連絡船の発着地だった場所を砂浜に再生させ、海で暮らすいきものたちの豊かな暮らしを取り戻すためにつくられました。2021年7月にオープンした、新しくきれいな海浜公園です。
砂浜には黄色くかたどられたAOMORIのオブジェや、りんごを真ん中でぱかっとあけたようなデザインの「びっくりんご」とよばれるオブジェが設置されています。いわゆる「映えスポット」として大人気で、この日も多くの撮影者でにぎわっていました。
あおもり駅前ビーチは、むつ湾に面しています。おだやかな波と、透き通った海の青色がきれいで、心が洗われるようでした。
ビーチ付近には、シールドの飲み比べができるレストランやお土産が買える「A-FACTORY」、ねぶたを間近で鑑賞できる「ねぶたの家ワ・ラッセ」など、観光施設も充実しています。
あおもり駅前ビーチからは、白と黄色のコントラストが特徴の青函連絡船「八甲田丸」が見えます。八甲田丸は、まだ青函トンネルが開通されていなかった1908年から1988年までの80年間、青森と函館を結ぶ連絡船として活躍しました。過去に運んだ総乗客数は、なんと1億6千万人。貨物は2億5千万トンにもおよびます。
青函トンネルが開通され、1988年3月にその歴史は幕を下ろしました。八甲田丸はそのときの最終船であり、青函連絡船の歴史上23年7カ月と現役期間が一番長かった船です。
八甲田丸最大の特徴は、鉄道車両をそのまま積み込むことができるところ。世界的にみても、なかなかありません。わたしが生まれたころにはもう青函トンネルは誕生していたので、今回はじめて八甲田丸を見ましたが、あまりの大きさと迫力に感動しました。
八甲田丸は、運航当時のままの状態で保存されています。操舵室やエンジンルーム、車両甲板(鉄道車両を積載するスペース)などを間近で見学できるほか、ビデオシアターで貴重な当時の様子を観ることができます。
青森の海の歴史を、また違う角度から感じられました。
そんな八甲田丸を見たあとは、青い海公園までつづく遊歩道「青森ラブリッジ」で潮風を感じます。遊歩道から見上げると「青森ベイブリッジ」とよばれる橋がずーっと続いています。
青森ベイブリッジは1994年に完成し、県内で2番目に長い橋です。青森の頭文字「A」のかたちに見えることから、青森市のシンボルの一つとなっています。夜はライトアップされ、夜景がきれいなスポットとしても有名です。
この日は最高気温31度越えの猛暑日でしたが、海のすぐそばの遊歩道では潮風が冷たく感じるほどで、快適に散歩できました。
青森ラブリッジを歩いていくと、青森港が眺められる「青い海公園」にたどり着きます。この公園付近には、個性的なオブジェやモニュメントが多く存在しています。
なかでもこの「赤い絲のモニュメント」は、青森市と函館市のツインシティ提携20周年を記念してつくられました。
旧制中学時代を青森市で過ごした太宰治が、小説「思ひ出」のなかで、弟である礼治と青森港桟橋で運命の女性と結ばれる赤い絲について語り合った挿話をもとにつくられたそうです。なんともロマンチックですね。
ラブリッジの由来も、海を見つめながら愛を語らうところからつけられたという説もあるのだとか。このようなストーリーを知っていると、より素敵な思い出になりますね。
青い海公園の周辺には、観光物産館「アスパム」があります。
大きな正三角形の建物が特徴的で、青森県民で知らない人はいないといっても過言ではありません。訪れたときはちょうどねぶた祭りが終わった時期だったので、多くの人でにぎわっていました。
青森ベイエリアの魅力は、その多様な観光スポットだけでなく、地域の歴史や文化と密接に結びついているところです。海を楽しめるのはもちろんのこと、文化や歴史を身近に感じられる施設が多く存在しています。
駅から少し歩けば、そこには青森の歴史や海の魅力を全身で楽しめる場所が広がっています。あなたもぜひ、体感しにきてくださいね。