レポート

【前編】「青森 1950-1962 工藤正市写真集」は、どのように誕生したのか?

thumbnail_青森_見本04

工藤正市さん(@shoichi_kudo_aomori) Instagramでその作品を初めて拝見してから、早いもので1年半が過ぎました。

昭和30年代の青森で、そこに生きる人々の姿。路地裏で遊ぶ子供たち。そして、懐かしい青森の街並み。

私が見たことのない時代の青森。それを収めたネガフィルムが、半世紀以上も「押し入れ」に埋もれていたということを知り、心が震えました。

■記事が完成し、そして、

昨年私は、工藤正市さんのInstagramアカウントにメールを送り、管理されている娘さん「工藤加奈子さん」とのやり取りをさせていただきました。

そして完成したのが、昨年度の記事【海を愛した写真家】故・工藤正市さんが撮影した青森の記憶写真 でした。

「青森にはこんな写真家がいた」ということを、世界の人たちにもっと知ってもらいたかった私は、尊敬する写真家の一人「高橋伸哉さん」にメールを送らせていただきました。

「大変恐縮ですが、私が書いた記事を読んでいただけますでしょうか。ぜひご紹介したい、青森の写真家のお話です」

数日して、なんと高橋さんからのお返事が届きました。

高橋さん「素晴らしいです。感動しました。工藤正市さんのお写真と記事を、私のSNSとサロンでもご紹介してよろしいでしょうか?」

たくさんのフォロワーをお持ちの高橋伸哉さんが記事をご紹介してくれると、あっという間に工藤正市さんの写真は、日本中の写真家、写真愛好家の元へと広がっていきました。

 

そして数ヶ月後、加奈子さんから一通のメールが届きました。

加奈子さん「来年、写真集を刊行させていただけるかもしれません」

工藤正市さんの写真集を刊行していただけることになったのは、東京都の「みすず書房」という出版社でした。

そして加奈子さんに仲介していただき、写真集企画の担当者である「小川純子さん」に、今回は非常に興味深いお話を聞くことができました。

 

(以下、みすず書房・小川さん談)

 

工藤正市さんのことを書かれた「海と日本PROJECT in 青森県」の記事を私が初めて読んだのは、確か昨年の夏。7月か8月のことでした。

私は2019年に「奥山淳志さん」という写真家の『庭とエスキース』という本を編集させていただいたのですが「この本を大切に読んでいる」ということをTwitterで書かれている方を知りました。

その方が「こんな写真家がいたのか!」と、工藤正市さんの記事を紹介していたのです。

「海を愛した写真家」という記事のタイトルにも惹き寄せられました。

そしてページを開いてみたらまず、そこに出ている写真のどれもが、ただ「青森の人々の日常の姿」でしかないのに、ぎゅっと心を掴まれました。

そしてお嬢さんの加奈子さんが語る、この写真を撮った父、工藤正市さんのお話にも驚きました。

こんなに味わい深く、ただのスナップのようでありながら、明らかに何者かが撮った写真たち。これが天袋の奥にずっと眠っていたなんて。

「一体どんな人だったんだろう?」と読み進むと「写真一筋に生きた方」というわけではなく「最後は海で釣りをしているのが好きな人」だったと。

なるほど。「海を撮る写真家」ではなく、そんな風に「海を愛した写真家」なのか。

そういう人が撮った写真なのだと知って、ますますそのまなざしに惹かれました。

ふいにInstagramで発表され始めた工藤正市さんの青森の写真。

そしてすぐに調査して、ご家族にインタビューを申し込まれたという文章からも「写真が好きな人だからこその見方」という思いがこめられていて。

それを写真ファンだけではなく、知られざる人柄や、青森の場所のことも絡めて紹介してくれたことに、私はお礼を言いたい気持ちになりました。

それぐらい、あの記事で初めて工藤正市さんの写真を見て、思いもしなかったドラマチックな背景を知ったときには、静かな興奮を覚えました。

 

 

<後編へ続く>

 

 

青森 1950-1962 工藤正市写真集

判型 A5変型判 タテ196mm×ヨコ148mm
頁数 432頁
定価 3,960円 (本体:3,600円)
ISBN 978-4-622-09020-5
Cコード C0072
発行予定日 2021年9月16日予定

昭和30年代の青森で、人知れず奇跡の瞬間を撮り溜めていた写真家がいた。
没後、発見されたフィルムの束。そこに写されていたのは、戦後の青森に生きる人々の日常の姿と、やがて失われる情景への思慕にみちた、故郷を愛する写真家のまなざしである。
家族がインスタグラムで発表するや、国内外の写真ファンの間で話題に。
工藤正市の写真の魅力に、今、世界は目を奪われている。

  • 残されたプリントとフィルムから一挙366点を収録
  • 写真家の写真雑誌入選作をたどる略歴を付す
  • 青森市街の撮影ポイントを示す地図を掲載

出典:みすず書房公式HP から

イベント名【前編】「青森 1950-1962 工藤正市写真集」は、どのように誕生したのか?

レポーター紹介

ハリヤマカズキ
青森県在住のライター兼フォトグラファー
海をはじめ、自然と人の繋がり表現したスナップ写真を撮るのを、ライフワークにしている

Twitter:https://twitter.com/hary_k_photo
  • 「【前編】「青森 1950-1962 工藤正市写真集」は、どのように誕生したのか?」
    記事をウィジェットで埋込み

    <iframe class="uminohi-widget newssite-article" src="https://aomori.uminohi.jp/widget/article/?p=4156" width="100%" height="800" frameborder="no" scrolling="no" allowtransparency="true"><a href="https://aomori.uminohi.jp">海と日本PROJECT in 青森県</a></iframe><script src="https://aomori.uminohi.jp/widget/assets/js/widget.js"></script>

関連リンク

  1. image1
  2. IMG_2595
  3. image1
  4. image1
  5. image1
  6. image1

Pickup

  1. hachinohe6
    八戸の海鮮を食べるならここ!「舘鼻岸壁朝市」「みなと食堂…

    青森県の東側、三八上北地方の中心都市・八戸は、江戸時代は三陸海岸における交易港でした。昭和期に漁港と…

  2. tsugaruhanto1
    津軽半島の海と絶景

    青森県の北西部は、石川さゆりの「津軽海峡冬景色」であまりにも有名な竜飛崎(歌詞では竜飛岬ですが正式名…

  3. natsudomari5
    夏泊半島と陸奥湾

    青森県の半島というと、陸奥湾の東西にそれぞれ位置する津軽半島と下北半島が有名でこの2つは知っていると…

  4. プロジェクトメンバー神さん
    ネイルポリッシュ『CYAN』のお話を伺ってきました!

    ホタテの養殖から加工、販売まで行っている「株式会社山神」企画販売しているネイルポリッシュ『CYAN』…

  5. shimesaba-photo1
    「ワインしめさば」で食卓に華を添えよう

    八戸といえばサバの町。美味しいサバの商品はもちろんたくさんあるのですが、最近特に気になっていた商品が…

海と日本PROJECT in 青森県
最新ニュースをウィジェットで埋込み

<iframe class="uminohi-widget newssite-newest" src="https://aomori.uminohi.jp/widget/newest/" width="100%" height="800" frameborder="no" scrolling="no" allowtransparency="true"><a href="https://aomori.uminohi.jp">海と日本PROJECT in 青森県</a></iframe><script src="https://aomori.uminohi.jp/widget/assets/js/widget.js"></script>

PAGE TOP