工藤正市さん(@shoichi_kudo_aomori) Instagramでその作品を初めて拝見してから、早いもので1年半が過ぎました。
昭和30年代の青森で、そこに生きる人々の姿。路地裏で遊ぶ子供たち。そして、懐かしい青森の街並み。
私が見たことのない時代の青森。それを収めたネガフィルムが、半世紀以上も「押し入れ」に埋もれていたということを知り、心が震えました。
昨年私は、工藤正市さんのInstagramアカウントにメールを送り、管理されている娘さん「工藤加奈子さん」とのやり取りをさせていただきました。
そして完成したのが、昨年度の記事【海を愛した写真家】故・工藤正市さんが撮影した青森の記憶写真 でした。
「青森にはこんな写真家がいた」ということを、世界の人たちにもっと知ってもらいたかった私は、尊敬する写真家の一人「高橋伸哉さん」にメールを送らせていただきました。
「大変恐縮ですが、私が書いた記事を読んでいただけますでしょうか。ぜひご紹介したい、青森の写真家のお話です」
数日して、なんと高橋さんからのお返事が届きました。
高橋さん「素晴らしいです。感動しました。工藤正市さんのお写真と記事を、私のSNSとサロンでもご紹介してよろしいでしょうか?」
たくさんのフォロワーをお持ちの高橋伸哉さんが記事をご紹介してくれると、あっという間に工藤正市さんの写真は、日本中の写真家、写真愛好家の元へと広がっていきました。
そして数ヶ月後、加奈子さんから一通のメールが届きました。
加奈子さん「来年、写真集を刊行させていただけるかもしれません」
工藤正市さんの写真集を刊行していただけることになったのは、東京都の「みすず書房」という出版社でした。
そして加奈子さんに仲介していただき、写真集企画の担当者である「小川純子さん」に、今回は非常に興味深いお話を聞くことができました。
(以下、みすず書房・小川さん談)
工藤正市さんのことを書かれた「海と日本PROJECT in 青森県」の記事を私が初めて読んだのは、確か昨年の夏。7月か8月のことでした。
私は2019年に「奥山淳志さん」という写真家の『庭とエスキース』という本を編集させていただいたのですが「この本を大切に読んでいる」ということをTwitterで書かれている方を知りました。
その方が「こんな写真家がいたのか!」と、工藤正市さんの記事を紹介していたのです。
「海を愛した写真家」という記事のタイトルにも惹き寄せられました。
そしてページを開いてみたら…まず、そこに出ている写真のどれもが、ただ「青森の人々の日常の姿」でしかないのに、ぎゅっと心を掴まれました。
そしてお嬢さんの加奈子さんが語る、この写真を撮った父、工藤正市さんのお話にも驚きました。
こんなに味わい深く、ただのスナップのようでありながら、明らかに何者かが撮った写真たち。これが天袋の奥にずっと眠っていたなんて。
「一体どんな人だったんだろう?」と読み進むと「写真一筋に生きた方」というわけではなく「最後は海で釣りをしているのが好きな人」だったと。
なるほど。「海を撮る写真家」ではなく、そんな風に「海を愛した写真家」なのか。
そういう人が撮った写真なのだと知って、ますますそのまなざしに惹かれました。
ふいにInstagramで発表され始めた工藤正市さんの青森の写真。
そしてすぐに調査して、ご家族にインタビューを申し込まれたという文章からも「写真が好きな人だからこその見方」という思いがこめられていて。
それを写真ファンだけではなく、知られざる人柄や、青森の場所のことも絡めて紹介してくれたことに、私はお礼を言いたい気持ちになりました。
それぐらい、あの記事で初めて工藤正市さんの写真を見て、思いもしなかったドラマチックな背景を知ったときには、静かな興奮を覚えました。
判型 | A5変型判 タテ196mm×ヨコ148mm |
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頁数 | 432頁 |
定価 | 3,960円 (本体:3,600円) |
ISBN | 978-4-622-09020-5 |
Cコード | C0072 |
発行予定日 | 2021年9月16日予定 |
昭和30年代の青森で、人知れず奇跡の瞬間を撮り溜めていた写真家がいた。
没後、発見されたフィルムの束。そこに写されていたのは、戦後の青森に生きる人々の日常の姿と、やがて失われる情景への思慕にみちた、故郷を愛する写真家のまなざしである。
家族がインスタグラムで発表するや、国内外の写真ファンの間で話題に。
工藤正市の写真の魅力に、今、世界は目を奪われている。
出典:みすず書房公式HP から
イベント名 | 【前編】「青森 1950-1962 工藤正市写真集」は、どのように誕生したのか? |
青森県在住のライター兼フォトグラファー
海をはじめ、自然と人の繋がり表現したスナップ写真を撮るのを、ライフワークにしている
Twitter:https://twitter.com/hary_k_photo