レポート

【陸奥湾とカマイルカ】今年も新たな発見が多数。清川先生のイルカ調査2021

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陸奥湾に毎年、春から初夏にかけて群をなしてやってくる野生の「カマイルカ」たち。

「海と日本PROJECT in 青森県」でも過去に何度も特集し、もはやイルカたちが陸奥湾に来てくれないと、夏がやってこないのでは?と勝手に思っております(笑)

その陸奥湾のイルカたちの生体について熱心に調査をされている「青森のイルカ博士」こと、青森大学社会学部の清川繁人教授に、2021年の調査を終えられた感想をお聞きしました!

◼️イルカたちがやってくる、豊かな陸奥湾

清川先生がイルカの調査を開始されたのは、今から約10年以上前。大学で生物の授業を教える一貫で、生徒たちに「青森県の身近な野生生物を紹介したい」と思い、フェリーへ乗船してイルカを見たことが最初だったそうです。

また個人的にも「青森ならではの生き物」ということでイルカの写真を撮りたくて、何度も海に通っているうちに「そもそもイルカは、なぜ毎年のように陸奥湾にやって来るのか?」 と疑問を持ち、本格的な調査を開始されました。

そして陸奥湾を回遊するイルカについて、清川先生はこれまでの調査から「陸奥湾海域の水温と、エサとなる小魚の数がイルカの行動を決定付けている」という大きな結論に達しました。

「日本海から津軽海峡を経由し陸奥湾に流入する暖流」と「八甲田山など雪山から下った冷たい雪解け水」が陸奥湾内でぶつかります。

「その境目にはプランクトンが豊富に発生し、イルカの餌となる小魚がたくさん集まる」という環境もまた、イルカが陸奥湾にやってくる大きな理由であり、そこからさらに細部に渡った調査を、年を重ねるごとに行われるようになったそうです。

■変化し続ける、陸奥湾の環境

さて、本年度の調査を終えられた感想を、清川先生にお聞きしました。

Q.今年のイルカたちの目撃数は昨年に比べて、いかがでしたか?

清川先生:昨年までは最大時で約300頭目撃していましたが、今年は約半分でした。

Q.今年は雪解けも早く、春も穏やかな気候が多かったのか、かなり早い段階でイルカたちが陸奥湾にやってきていたように思えました。そちらのご見解もお聞かせください。

清川先生:漁業者や釣り人の話を総合すると、例年より1週間ほど早く陸奥湾にイルカが現れました。昨年は降雪量が少なく暖かい冬でしたが、春先寒い日が続き、サクラの開花日は青森市の合浦公園で4月19日でした。

そして、今年は平年並みの雪が降りましたが、春は暖かい日が多く、それによりサクラは4月13日に開花しました。サクラの開花とイルカの出現はほぼ連動しているのではないかと思われます。

Q.今年、清川先生が調査以外に担当されたイルカに関するご活動(ガイドなど)についてもお聞かせください。

清川先生:3名のイルカ好きが集まって「むつ湾フェリーでいるかに会いたい(隊)」というボランティアガイドを結成し、フェリーの船上でイルカについての解説や発見のお知らせをしました。

今年はイルカ目当てでフェリーに乗船した方も多く、イルカウォッチングを楽しんでいただけたと思います。

■海の環境を考える

Q.今年、特に印象に残った海での場面などがあれば、お聞かせください。

清川先生:シーズン前半は不安定なお天気が続きましたが、その分、虹を見る機会も多かったです。海上から見る虹は遮るものがなく、半円形でとても素晴らしかったです。

清川先生:また、蜃気楼も何度も目撃しました。陸奥湾で春に現れる蜃気楼は「上位蜃気楼」という比較的珍しいもので、国内では富山湾などが有名です。陸奥湾ではあまり知られていませんが、出現頻度は比較的高いので、ぜひ双眼鏡をお持ちになってフェリーにご乗船いただきたいですね。

Q.年々変化している陸奥湾の環境。清川先生が今年の調査を終えて新たに気がついた、意識していきたい内容があればお聞かせください。

清川先生:サクラの早咲きの例を示したように、確実に地球温暖化は進んでいます。イルカの生態は「温暖化により大きな影響を受けている」ということが今年の調査からわかってきました。

大気と異なり海水は保温効果が高く、一度温まってしまうと気温が低くなっても水温が下がることはありません。イルカの生態を知っていただくことで、日々の生活が温暖化の原因とならないよう、これからも呼びかけたいですね。

Q.最後に「海と日本POROJECT in 青森県」の視聴者へ「毎年のようにイルカを見られる陸奥湾の楽しさ、大切さ」について、メッセージをお願いします。

清川先生:陸奥湾ではイルカの出産や子育てが行われ、また「繁殖のために大群が集まる」ということもわかってきました。イルカたちにとって命をつなぐ大切な海を守るのは、同じ地球で暮らす人類の責任だと思います。大群のイルカをウォッチングしながら、皆さんと「海の環境」について一緒に考えたいですね。

インタビューご協力、写真提供:清川 繁人 氏 (青森大学 社会学部教授)

陸奥湾のイルカたちの生体に興味を持ち、10年以上前から調査をしている。個人の調査活動以外にも、フェリーなどの船上からイルカたちをウォッチングするツアーのガイドをするなど、青森県を代表する「イルカ博士」として精力的に活動中。

また、青森県の弘前藩にかつて存在したという忍者集団「早道之者(はやみちのもの)」について調査研究、忍者パフォーマンスを披露する全国初の大学公認「青森大学 忍者部」の顧問を勤め、青森県内を駆け回っている。

イベント名【陸奥湾とカマイルカ】今年も新たな発見が多数。清川先生のイルカ調査2021

レポーター紹介

ハリヤマカズキ
海が大好きなライター。生まれ変わったらイルカになりたい。
  • 「【陸奥湾とカマイルカ】今年も新たな発見が多数。清川先生のイルカ調査2021」
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